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https://digital.asahi.com/articles/ASNBF5V37NB9UZVL001.html

錦之介叔父と勘三郎兄さん　時を超え中村獅童に同じ助言

映画や歌舞伎の世界で、特異な存在感を放つ歌舞伎俳優の中村獅童さん（48）。やくざから純朴な役柄までこなす演技の幅の広さは、叔父で時代劇の名優、萬屋錦之介（1932～97）の言葉に裏打ちされていた。

　錦之介は、獅童さんの父・初代中村獅童さんの実弟。歌舞伎の世界から映画に転身、映画「宮本武蔵」やテレビドラマ「子連れ狼（おおかみ）」など数多くの代表作をもつ大スターだ。

　「叔父が入ってくると部屋が明るくなる。甲高い声で『幹弘（本名）、元気か』と声をかけてくれて。明るくて格好良くて、子どもながらにこれがスターだとあこがれましたね」

　獅童さんが19歳のころ、錦之介が座長を務める巡業公演に加わった。あるとき、夕食の席で話をする機会があった。

　「これからも役者をやっていくんだろう」

　「そうです」

　そんなやりとりを経て、錦之介が一言発した。

　「顔で演じるな、心で演じろ」

　心で感じたことが、表情となり、声となり、セリフとして凝縮される。そうでないと観客の心を打たないという意味だ。

　「芝居のことで何か言われたのはその時が初めて。ようやく一人前に扱ってくれたのだと思う」。錦之介は、獅童さんが24歳の時に亡くなり、演技についてきちんと話をしたのはその時が最初で最後になった。

　心を入れた演技はまずは映画の世界で評価された。スキンヘッドの卓球選手に扮した「ピンポン」（2002年）の怪演で日本アカデミー賞新人俳優賞、純朴な青年を熱演した「阿修羅（あしゅら）のごとく」（03年）では、同優秀助演男優賞を受賞した。

　スクリーンでの好評を受けて、歌舞伎で役がつくようになったが、歌舞伎の型がなかなか身につかない。知名度とのギャップに悩んだ時に、十八代目中村勘三郎（1955～2012）がこう励ましてくれた。「獅童は心を入れる芝居ができているのだから、その最大の武器を大切にした方がいい。歌舞伎の型はやっているうちに上手になるから」

　「叔父の錦之介と勘三郎兄さん、大好きで尊敬する2人の名優に、時を超えて『心で演じることの大切さ』を言われたのです」

　最新作は公開中の映画「みをつくし料理帖（ちょう）」。角川映画で一大ブームを起こした角川春樹さんの監督作品だ。江戸時代、江戸の料理店を舞台に、女料理人（松本穂香）と幼なじみのあさひ太夫（奈緒）との心の絆を描く。演じた又次は2人をつなぐ重要な役柄。心のこもった演技は見応えがある。

　「信頼できる男とはどういう男なのか。台本に書かれていない部分を心で感じて、誠実さや正直さ、心に秘めた強い思いを表現しました」

　没後20年以上経つが、錦之介は心の中に生き続ける。役を演じるときに「叔父ならどう演じたか」と思うことも。「叔父の言葉は甘えや慣れが出てくるときの戒めにしている。時がたてばたつほど言葉の深みを感じるようになりましたね」

でもまあ一度はみんな是非

見てるポイントも違うんだろうけど