婚活女「まず年収は1000万以上、優しくて、頼りがいがあって、将来性は抜群で……」

1 名前:ひみつの名無しさん 投稿日時:2021/05/04(火) 17:00:11.811 ID:qGTdeV7/0
女「こんな私ですので、結婚して下さい!」

男「いや……」

女「お願いしますよ! しましょう!」

男「あの……」

女「絶対損させませんから! さあ、手始めに婚約から……」

男「し、失礼します!」ダッ

女「ちょっと! 逃げないでぇ!」

2 名前:ひみつの名無しさん 投稿日時:2021/05/04(火) 17:01:47.467 ID:lXj1W1Caa
年収1000万以上 ←うん
優しくて←当然だね
頼りがいがあって←頼るの?
将来性がある?←ごめんなさい
3 名前:ひみつの名無しさん 投稿日時:2021/05/04(火) 17:04:06.407 ID:qGTdeV7/0
女「あなた、いい年してニートなんですってね」

ニート「ええ、まあ」

女「よかったね。私がずっと養ってあげるから。もう仕事しなくていいんだよ」

ニート「でも……」

女「というわけで、結婚しましょう!」

ニート「ハロワ行きます!」

女「なんで!?」

4 名前:ひみつの名無しさん 投稿日時:2021/05/04(火) 17:07:30.067 ID:qGTdeV7/0
女「なんでよ!? なんでみんな逃げるの!? こんな優良物件なのに!」

女「顔だって……そりゃ超美人とはいえないけど決して悪くないはず!」

相談員「なんていうか……あなたのその強引すぎるオーラが、男性を怖がらせてるんじゃないでしょうか」

女「ううう……」

女「じゃあさ、あなた結婚してよ。ね? いいでしょ!」

相談員「私には心に決めた人が……」

女「ちくしょぉぉぉぉぉ!!!」

5 名前:ひみつの名無しさん 投稿日時:2021/05/04(火) 17:11:20.295 ID:qGTdeV7/0
― 町 ―

女「ううう……結婚したい。結婚、結婚、結婚……」

女(こうなったら片っ端から求婚してやろうか……)

女(あの会社員!)ギロッ

会社員「ひっ!」サッ

女(あの若者!)ギロッ

若者「わっ!」サッ

女(あのおじいちゃん!)ギロッ

老人「くわばらくわばら……」サッ

女(あの少年!)ギロッ

少年「怖いよう……」サッ

女(どいつもこいつも目を逸らしやがってぇ……)

6 名前:ひみつの名無しさん 投稿日時:2021/05/04(火) 17:14:14.384 ID:qGTdeV7/0
女(あの青年!)ギロッ

青年「…………?」

青年「ボクになにか?」

女「おおっ、目を逸らさない! さてはあんた、只者じゃないわね?」

青年「よく分かりましたね!」

女「ふうん、何やらかしたの?」

青年「えぇと……あの……ケッコン詐欺を少々……」

女「まさかの結婚詐欺!」

7 名前:ひみつの名無しさん 投稿日時:2021/05/04(火) 17:16:15.449 ID:qGTdeV7/0
女「今ここらで詐欺グループが暗躍してるらしいけど、その一味?」

青年「あ、いや……そういうわけじゃ……」

女「もうやってないの?」

青年「はい……やってません」

女「ならいいや。贅沢いえないし、この際詐欺師でもいい! 結婚しよ!」

青年「えっ、あ、はいっ!」

女「やったぁぁぁぁぁ! じゃ、とりあえず結婚を前提にしたお付き合いということで、よろしくね!」

青年「はい!」

女(フッ、勢いって大事ね)

8 名前:ひみつの名無しさん 投稿日時:2021/05/04(火) 17:19:22.356 ID:qGTdeV7/0
― 事務所 ―

女はファッションデザイナーとして、自分の事務所を持っている。

女「おはよ」

地味娘「おはようございます、先生」

女「さ、今日もはりきって仕事しよっか!」

地味娘「あれ? 先生、何かいいことあったんですか?」

女「分かるぅ? 私にもついに春が来たのよ、春が! スプリング・ハニ・カム!」

地味娘「ハニカムだと蜂の巣になっちゃいますよ」

9 名前:ひみつの名無しさん 投稿日時:2021/05/04(火) 17:22:13.891 ID:qGTdeV7/0
地味娘「先生、大手のファッションメーカーから依頼が来てます」

女「あら、嬉しい。メール転送してくれる?」

地味娘「送りました」

女「……なるほど、新しいブランドを立ち上げたい、か。これは大きな仕事になるね」

女「さっそく打ち合わせに出かけてくる!」

地味娘「行ってらっしゃいませ」

女「ル~ルルル~。は~るがき~た、は~るがき~た、ど~こ~に~きた~♪」

女「それは……イッツミー!」

地味娘(いつにもましてハイテンションだなぁ……)

10 名前:ひみつの名無しさん 投稿日時:2021/05/04(火) 17:23:25.799 ID:jSQT0juxr
浮かれまくってんな
11 名前:ひみつの名無しさん 投稿日時:2021/05/04(火) 17:26:12.804 ID:qGTdeV7/0
休日――

女「おはよう、詐欺師君」

青年「おはようございます。できれば、詐欺師はやめて下さい……」

女「ああ、ごめんごめん」

女「デートしたいんだけど、私恋愛経験ほとんどないから、デートコースに自信ないのよね」

女「というわけで、ここはあなたに任せたいんだけど」

青年「ボクもそうですよ」

女「えっ、恋愛経験ないのに結婚詐欺なんかやってたの!? チャレンジャーすぎない!?」

青年「すみません……」

女「じゃあさ、家に来ない? おいしい手料理ご馳走してあげる!」

12 名前:ひみつの名無しさん 投稿日時:2021/05/04(火) 17:29:27.264 ID:qGTdeV7/0
― 女の自宅 ―

女「シチューを作るからね」

青年「楽しみです」

女「さっそくジャガイモを剥いて……」

たどたどしい手つきでジャガイモを剥く。

女「うわっとぉ! 手を切るとこだったぁ!」

青年「ボクがやりますよ!」

13 名前:ひみつの名無しさん 投稿日時:2021/05/04(火) 17:32:15.428 ID:qGTdeV7/0
青年「…………」スッスッ

手際よくシチューを作っていく。

女「わぁ、上手! 特に包丁さばきなんてプロみたい!」

青年「訓練でよくやらされたんで……」

女「訓練? なんの?」

青年「あ……えぇと、あの……詐欺師の」

女「へぇ~、詐欺って刃物の扱いも重要なんだ。奥が深いんだね」

14 名前:ひみつの名無しさん 投稿日時:2021/05/04(火) 17:34:52.985 ID:1zUqkfSM0
楽しみ
15 名前:ひみつの名無しさん 投稿日時:2021/05/04(火) 17:35:32.525 ID:qGTdeV7/0
青年「どうぞ」

女「いただきまーす!」パクッ

女「おいひぃ~! グルメ漫画の女の子みたいな顔しちゃうぅ~!」ホワァァァ

青年「すごい顔ですね」

女「こんなおいしい料理を作れるのに詐欺をやってたなんて、よほどの事情があるのね」

女「よっしゃ! 私の愛のパワーであなたを暗黒の世界から救ってあげる!」

青年「あ、ありがとうございます」

16 名前:ひみつの名無しさん 投稿日時:2021/05/04(火) 17:38:24.197 ID:qGTdeV7/0
― 事務所 ―

地味娘「先生、おはようございます」

女「おはよう……あれ?」

地味娘「なにか?」

女「今日はいつもとはずいぶん雰囲気が違うね。垢抜けたというか……」

地味娘「ちょっとイメチェンしてみたんです」

女「ふうん。色々試してみるのはいいことよ」

女(この子もデザイナー志望だしね)

17 名前:ひみつの名無しさん 投稿日時:2021/05/04(火) 17:42:15.065 ID:qGTdeV7/0
― 公園 ―

二人は公園をデートしていた。

女「天気がよくて、気持ちいいね」

青年「ホントですね。雲一つない青空です」

女「おっ、あそこ歩いてる人、いいセンスしてる」

女「んー……あっちの人はイマイチね。素材はいいのに」

青年「どうしたんです?」

女「あ、ごめん。職業柄、ファッションチェックするのクセになっちゃってて」

青年「分かります。ボクにもそういうクセってありますよ」

女「あっ、やっぱりそうなんだ!」

18 名前:ひみつの名無しさん 投稿日時:2021/05/04(火) 17:45:33.912 ID:qGTdeV7/0
カキーンッ!

女「へ?」

青年「よっと」パシッ

背後から飛んできたボールをなんなくキャッチする。

女「すごい、見ないで取った!」

青年「背後への警戒は欠かさないようにしてるんです。これがボクのクセですね」

女「へえ……詐欺師って大変なんだ」

スミマセーン… アリガトウゴザイマース…

19 名前:ひみつの名無しさん 投稿日時:2021/05/04(火) 17:48:12.431 ID:qGTdeV7/0
……

女「さっきのお店、おいしかったねー」

青年「ええ、最高でした!」

ブロロロロ…

すぐそばをスクーターが通りすぎる。

青年「あ、こける」

女「え?」

20 名前:ひみつの名無しさん 投稿日時:2021/05/04(火) 17:52:48.177 ID:qGTdeV7/0
ズダァンッ!

茶髪「いたたた……」

女「本当にこけた!」

青年「大丈夫ですか!?」ダッ

茶髪「う、うう……」

女「うわ、ひどい出血……」

青年「救急車を呼んで下さい!」

女「うん、分かった!」

21 名前:ひみつの名無しさん 投稿日時:2021/05/04(火) 17:54:44.416 ID:qGTdeV7/0
女「場所は……。はい……はい……お願いします!」

女「どう?」

ハンカチを取り出す青年。

青年「ここを縛れば……血が止まります」ギュッ

青年「それとここのツボを刺激すれば、さらに血流が大人しく……」

女「おおっ!」

茶髪「あり……が、とう……ござい……ます……」

青年「動かないで下さい。すぐ救急車が来ますから」

22 名前:ひみつの名無しさん 投稿日時:2021/05/04(火) 17:57:02.696 ID:jSQT0juxr
青年やるな
23 名前:ひみつの名無しさん 投稿日時:2021/05/04(火) 17:57:31.440 ID:qGTdeV7/0
まもなく救急車が駆けつけ――

救急隊員「的確な応急処置でした。ご協力感謝します」

青年「いえ……とんでもないです」

女「やるぅ!」

女「だけど……どうして怪我の治療なんてできるの? 看護師を目指してたとか?」

青年「えぇと……これも詐欺師としての訓練で……」

女「詐欺師って色んなことやるんだねー」

24 名前:ひみつの名無しさん 投稿日時:2021/05/04(火) 18:00:24.018 ID:qGTdeV7/0
― 事務所 ―

地味娘「…………」

女(彼女、最近ますますオシャレするようになったなぁ)

女(ちょっと派手すぎる気もするけど……。せっかくの素朴な可愛さが台無しになってるような……)

地味娘「あの、先生」

女「あ、あらどうしたの?」

地味娘「給料の前借りを……お願いできないでしょうか?」

女「え」

25 名前:ひみつの名無しさん 投稿日時:2021/05/04(火) 18:03:12.231 ID:qGTdeV7/0
地味娘「どうしてもお金が必要で……」

女「…………」

女「かまわないわよ」

地味娘「いいんですか!?」

女「うん、あなたにはいつもお世話になってるし。これぐらいの頼みは聞いてあげる」

地味娘「あ、ありがとうございますっ!」ペコペコ

女「…………」

26 名前:ひみつの名無しさん 投稿日時:2021/05/04(火) 18:06:13.885 ID:qGTdeV7/0
……

女「…………」

青年「どうしました? 珍しくボーッとしちゃって」

女「あ、ごめん。ちょっと考え事しててね」

青年「なにか心配ごとがあるならいって下さい。力になりますよ」

女「ありがと。だけど、ウチの職場のことだから」

女(ついかっこつけて理由は聞かないでおいたけど、やっぱりまずかったかなぁ)

女(何事もなければいいんだけど……)

27 名前:ひみつの名無しさん 投稿日時:2021/05/04(火) 18:10:06.920 ID:qGTdeV7/0
― カフェ ―

イケメン「君の顔を見ていると、どうしても笑みがこぼれてしまう」

地味娘「どうして?」

イケメン「一日のうち、こうして君と会ってる時間がオアシスだからだよ」

地味娘「オアシスだなんて……」

イケメン「そうやって照れてる君も可愛いよ。ところで、例の件なんだけど……」

地味娘「うん、まとまったお金……持ってきたよ!」

イケメン「ホントかい! ありがとう!」

店員「コーヒーお持ちしました」

28 名前:ひみつの名無しさん 投稿日時:2021/05/04(火) 18:12:13.682 ID:qGTdeV7/0
イケメン「よく集めてくれたね! これだけあれば、起業することができる!」

地味娘「ホント?」

イケメン「それで商売が軌道に乗れば、君と一緒になれるよ! いや必ず乗せてみせる!」

イケメン「僕は青年実業家、君はファッションデザイナーになるんだ!」

地味娘「嬉しい!」

イケメン「今のうちに新婚旅行先も決めておかないとね」

地味娘「うふふ、先生に報告するのが楽しみ!」

29 名前:ひみつの名無しさん 投稿日時:2021/05/04(火) 18:15:11.730 ID:qGTdeV7/0
……

……

― 事務所 ―

女「…………」

女(おかしい。あの子、もう三日も休んでる……)

女(電話しても出ないし……何かあったのかな)

女(プライバシーに関わるのもと思ってたけど、一度家に行ってみた方がいいかもしれない)

30 名前:ひみつの名無しさん 投稿日時:2021/05/04(火) 18:17:16.349 ID:o3E/2OcB0
支援
31 名前:ひみつの名無しさん 投稿日時:2021/05/04(火) 18:18:16.064 ID:qGTdeV7/0
女「……ってわけなの。今までこんなことなかったから不安で……」

青年「そんな真面目な女の子が無断欠勤なんて気になりますね」

女「これから行ってみようかと思うの」

青年「ならボクも行きますよ」

女「いいの?」

青年「はい、何か役に立てるかもしれませんから」

女「ありがとう、心強いよ!」

32 名前:ひみつの名無しさん 投稿日時:2021/05/04(火) 18:21:15.052 ID:qGTdeV7/0
― 地味娘の自宅 ―

ピンポーン…

女「ダメだ、出てこない」

女「どうしよう……」

青年「じゃあ、開けちゃいましょう。もし倒れてたりしたら大変ですし」

女「え」

青年「この針金で……」カリカリ…

女「クッキングだけじゃなくピッキングまでできるの!?」

青年「はい、訓練で……」

女「このやり取りもすっかりおなじみになったね」

33 名前:ひみつの名無しさん 投稿日時:2021/05/04(火) 18:24:50.576 ID:qGTdeV7/0
部屋に入る。

女「なにこれ、真っ暗……」

青年「気をつけて下さい」

ウッウッウッ…

女(すすり泣く声……?)

女「あ!」

地味娘「……あ」

すっかりやつれている。

女「ごめん、勝手に入っちゃって……。でも、どうしたの? いったい何が……」

地味娘「う、ううう……」

女「!」

地味娘「先生ぇ~!」ダッ

34 名前:ひみつの名無しさん 投稿日時:2021/05/04(火) 18:24:52.936 ID:arMxJyZt0
みてます
35 名前:ひみつの名無しさん 投稿日時:2021/05/04(火) 18:27:25.562 ID:qGTdeV7/0
女「騙された?」

地味娘「はい……起業にお金が必要だっていわれて、私の貯金も前借りしたお金も渡したんです……」

地味娘「そしたら音信不通になっちゃって……」

地味娘「事業が軌道に乗ったら、結婚の約束もしていたのに……。もう先生に会わす顔もなくて……」

女「それって結婚詐欺じゃない! ――まさか!」ギロッ

青年「ボ、ボクじゃないですよ!」

地味娘「私の彼はもっとイケメンでした……」

青年「うう……。だけど疑いが晴れてよかった……」

女「とりあえず、ここじゃなんだし、ちょっと場所を変えようか」

36 名前:ひみつの名無しさん 投稿日時:2021/05/04(火) 18:31:15.211 ID:qGTdeV7/0
― カフェ ―

女「今、お金はあるの?」

地味娘「いえ、すっからかんです……」

女「だったら生活に必要なお金は私が出してあげる」

地味娘「そんな! そんなことできません!」

女「いいの、気にしないで。というより、むしろそうしたいのよ」

地味娘「え……?」

女「あなたは私の部下であり弟子で、妹みたいなもんなんだから。もっと甘えてよ」

地味娘「あ、ありがとうございます……」グスッ

青年「…………」

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