ろくでもない人間がいる。お前である。くだらないことに執着して他人に迷惑をかける人間がいる。

お前はすでに赤ん坊の頃から親に好かれてなかった。俺は生まれる前からお前を見ているから、本当の最初のうちは可哀想だと思っていたんだ。たまたま発生したお前という魂が、まだ母親の腹の中にいるうちから面倒がられ、疎まれ、憎悪を向けられてるなんて理不尽なものだなと思って同情もしていた。

おいおい、コキン、とやるんだよ、と俺は声なき声で叫ぶ。なんでもいい。できるだけ放っておく、んじゃなくて、捨てて餓死させるんだよ。見ないフリをするんじゃなくて、窓から捨てて……叩きつけて、ぱっと終わらせるんだよ！

ふう、と俺はため息。もう普通の呼吸よりため息の方が多いっていうか、ため息で呼吸しているような状態だが、思う。だ〜か〜ら〜、お前という諸悪の根元を叩けない限り、どのような望みも叶わないんだっつの！コキン！だよ！コキン！

で、お前はチンチンに気づくより先に女の子の割れ目に気づく。その決定的に人の心を揺らがせる大事な穴の存在に。
俺はもう本気で見てられない。

お前はまず小さな子供をいじくる。ひどい怪我をさせる。それから余計な知識を得る。「女の子のここはとても大切な場所なの」云々。優しい奴と《ちゃんと教えてあげなくちゃ》って謎の思い込みはお前にとっての毒であり甘い蜜だ。

いいぞいいぞ！いけいけ！お前にも権利がある！お前にこそ権利がある！チャンスがあるのはお前だけなんだ！いけいけいけ！
ガン！
でもこいつもまた泣き出す。
おいおいおい！

でも俺には俺の考えと感情と知識や認識があった。俺は実際には観た憶えのない『未知との遭遇』や『ハンナとその姉妹』の物語を知っているし読んだことのない『プレーンソング』って小説の内容を……はっきりとは憶えてないけれども猫が出てきたのを憶えている。

「死なせてくれ」
と実際看護師さんや医者にお願いもしようとしたんだけれど、初めて使う唇と舌が怪我もあってもつれまくって
「れりににゃむぬふれ」
みたいになった。
まあどうせ無駄だっただろう。この空間には俺を助けようとする人間ばかりだったから。