「板長からセクロスを強要され、変態ブス呼ばわりされた」老舗旅館の元従業員が提訴。これもう嬉野温泉じゃなくて悲し野温泉だろ

https://mainichi.jp/articles/20230428/k00/00m/040/210000c

佐賀県嬉野市の嬉野温泉にある旅館で働いていた30代女性が、料理長の50代男性から性行為を強要され、旅館側も適切に対応しなかったとして、料理長と旅館の運営会社に約1400万円の損害賠償を求める訴訟を長崎地裁大村支部に起こした。1月19日付。訴訟は長崎地裁に回付され、5月16日に初弁論が開かれる。

訴状によると、女性は2018年9月からこの旅館で働き、デザート作りを担当していた。19年9月ごろ、女性は既婚者の料理長から食事に誘われ、昼食後に人けのない展望台に連れて行かれて体を触られた後、ホテルで性行為を強要されたと主張。同12月ごろと20年6月ごろにも食事に誘われ、ホテルなどで性行為を強いられたとしている。

女性は料理長との連絡を絶とうと、無料通信アプリ「LINE（ライン）」のアカウントを削除。すると、「ブス」「4ね」「変態女」などと書かれた紙が、女性の職場に張られるようになった。女性は張り紙や料理長のことを別の管理職の男性に相談したが「俺は既婚者じゃないけん、大丈夫。俺ともご飯行こうよ」などと言われたといい、料理長とのことを社内で吹聴されたと主張している。

医師から不安障害と診断された女性は、22年6月末で退職。女性は「恐怖心で（性行為に）拒否や抵抗ができず、嫌悪感を抱きながら我慢していた。同じような被害に遭う人が出ないよう、同様の境遇で苦しんでいる人の後押しになるよう提訴した」と話す。

「正直、そういうことをされるとは思っていなかった。とっさのことで、理解が追いつかなかった」

佐賀県嬉野市の嬉野温泉にある旅館の男性料理長から性行為を強いられたとして、損害賠償を求める訴訟を起こした元従業員の女性は毎日新聞の取材に、逃げられなかった理由をこう答えた。

旅館でデザート作りをする仕事を選んだのは元々、お菓子作りが好きだったからだ。働き始めて約1年後、女性は料理長から1回目の性行為を強要されたと主張。「ただただ恐怖で『やめて』と言葉に出すことも、体に力を入れて抵抗することもできないまま、時間が過ぎていった」と女性が訴える。

おとなしく自己主張が苦手な性格といい「ついて行った私が悪い」「抵抗できなかった私が悪い」と自らを責めた。感情がまひし、いつからか「死にたい」と思うようになり、職場に「4ね」と書かれた紙が張られるようになると「やはり自分は死んだ方がいいんだ」と、実際に手首を切ったこともあったという。

その後、信頼できる友人や弁護士に相談し、女性は徐々に「自分の身に起きたことが性暴力だと気づくことができた」と振り返る。「一人の人間として、今回のようなことはあってはならないと社会に訴えたい」。女性は力を振り絞るようにして語った。【樋口岳大】

草