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2025年7月23日 16時37分
60歳の誕生日。
男性は近所のスーパーで買った小さな「ショートケーキ」に、そっとろうそくを立てました。
ハッピーバースデーの歌はありません。
母親は亡くなり、父親は高齢で施設に入っています。
「人間を信じることはもうできねえ。この事件で人生を棒にふったのだから」
そう語ると、男性は静かに、ろうそくの火を吹き消しました。
人気者だった少年が“殺人犯へ” 暗転した人生1965年。福井で、公務員の両親のもとに生まれた前川彰司さん。スポーツ万能で、明るい性格のやんちゃな少年に育ちました。
人生が暗転したのは21歳の時でした。
当時、若者たちの非行グループとつきあいがあった前川さん。1987年3月29日。病院にいる時に突然警察官が現れ、逮捕されました。
1987年 送検時の前川さん前川彰司さん
「まったく身に覚えがないことで。自分のやったことで逮捕されたり、塀の中に入らなあかんていうならまだわかるんですけど…。驚きというか、困惑に近いものがあった」
逮捕の容疑は「殺人」。
1年前、福井市内で女子中学生が自宅で刺され、命を奪われた事件の容疑者とされたのです。
しかし当時、前川さんは事件のことをろくに知らなかったといいます。「事件に関わったことは一切ない」と身の潔白を主張してきました。
知人による目撃証言 長時間の取り調べ
逮捕された根拠は「事件が起きた夜に、服に血が付いた前川さんを見た」という複数の知人の証言でした。
目撃証言をした知人たちが書いたイラスト
連日長時間に及ぶ取り調べを受けたという前川さん。自白を強要され、次第に追い詰められていったといいます。
「お前らいったい何を言っているんや。何の話してるんやって、逆にこっちが問いたくなる。警察のストーリーが出来上がっているんです。包丁はどこから持ってきたとか、何人でいったとか、『本当に知らないのか』ということばを投げかけられた。髪の毛をつかまれて押しつけられたり『態度がふてぶてしい』って机を蹴られたりね。憤りを超えて、ある種のあきらめというか、もう無理やなって」
1995年2月。知人たちの証言は「信用できる」と認められ、2審の高等裁判所で有罪判決が言い渡されました。
「判決が出た日のあの時の雰囲気は、初めから飲み込まれていたっていうか。法廷に入る時から、なんとなく分かっていた。裁判官が入ってきて、懲役7年に処すと。沈痛というか、重い深いところまで落とされた」
“やっていないものはやっていない” 再審を求めて
2003年、刑期満了となり出所したのは37歳の春でした。
服役中から頭の中にあったのは「自分の無実を証明すること」だったといいます。
「違うものは違う、やっていないものはやっていない。やっぱりぬれぎぬを晴らすべきではないかなと。社会正義みたいなものを追いかけた。事実でないことに対して、やっぱり違うと真実を追い求めました」
再審請求の時の会見
出所の翌年、無実を訴え、裁判のやり直し=再審を求める闘いが始まりました。
しかし、前川さんに向けられる視線は冷酷でした。近所の人にあいさつしても、目も合わせてくれなくなったといいます。
「一回疑われたらもう終わりです。疑う人は疑う。『いやあれは前川が犯人や』とか不信感が残る。やっぱり精神的にキツくなった」
精神が不安定になり、一時は入院することになった前川さん。代わりに、再審に向けて活動を続けてくれたのが、両親でした。
“殺人犯の親”と言われても 無実を信じ続けた両親
「子どもが逮捕されたときは公務員の端くれでした。職場や町内でも、私への視線がとても痛かったです。それも悔しい、悲しい、何もかもですよ」
父・禮三さん
前川さんの父・禮三さんは、息子が逮捕された当時、福井市の財政課長を務めていました。
「息子を守らなければならない」と、妻・真智子さんとともに街頭や集会で無実を訴え続けました。
「殺人犯の親だ」と見られ、自分たちの話に耳を傾けてくれない人々…。それでも一日たりとも息子のことを疑うことはかったといいます。
「女房は私よりも気が強かったので、涙は出さなかった。でも、おそらく僕のいないところで泣いていたんでしょう。事件の当日は彰司も一緒に家にいたんです。だから彼女が一番、事件と関わりがないと知っていた。きぜんとした態度で『お父さんこんなものおかしいよ』と。大きな間違いだからと逆に僕を慰めてくれたんです」
しかし、再審請求をしようとした時。母・真智子さんが体調を崩し、他界。
息子の無実を最後まで信じ続けた真智子さんは、再審の開始を見届けることはできませんでした。
母を失った前川さんに、さらに立ちはだかったのが再審までの高い壁でした。
再審請求をしてから7年たった2011年、裁判所は一度、再審開始を決定します。
「やっと無罪を証明できる」
自分の人生がやり直せるかもしれないと、前川さんは47歳で高校に復学しました。
しかし、2013年3月、卒業式を終えた直後。再審を認める決定は、検察の不服申し立てを受けて、取り消されてしまったのです。
再審開始決定が取り消された後の前川さん
「卒業式を迎えたのが3月3日。6日に名古屋高裁で棄却された。面目丸つぶれやね。つらかった、自分を失っていた。棄却されたあとに食べたのが、味噌煮込みうどん。味がしなかった。死ぬこともちょくちょく意識しました」
事態が動いたのは、2023年。
検察が300点近い証拠を開示し「事件が起きた夜に、服に血が付いた前川さんを見た」という目撃証言の矛盾が見つかったのです。
最初に再審を求めてから20年をへて、ようやく、やり直しの裁判が開かれることになりました。
“誰も責めるつもりない” 60年の人生
2025年5月、前川さんは60歳の誕生日を、1人自宅で迎えました。
92歳になった父は高齢者施設に入っています。
「長かったような気もするけど、あっという間だった気もする。事件発生から39年。振り返るとやっぱりこの年月、むなしいものは隠せませんよね」
「思い描いていた還暦って、ちょっとひげが白くなって、ちょっとはげてもいいですけど、妻がいて、子どもがいて、孫がいて。バーベキューなんかしているといい感じだよね。みんなと同じような青春時代とか、大人になってからのつきあいとか、僕はできなかった。若い夫婦が赤ちゃん連れてスーパーの中で買い物していると目がいって、正直うらやましい」
ことし7月18日。ついに再審で「無罪」が言い渡されました。
判決のあと裁判長は「39年もの間、大変ご苦労をおかけし、申し訳なく思っています。かけがえのない人生を、長期間、服役で奪うことになり、取り返しのつかないことをしました」と謝罪しました。
いま、前川さんは目撃証言をした知人のことも、責めるつもりはないと言います。
「恨みがないわけではないんですけれども、その感情を持ったって恨みが募るだけです。まして、いま頑張ってらっしゃるわけでしょ、彼らも。いまさらね、仕返ししてやろうとかそんなことは考えんね。『ああこれが俺の人生なんかな』っていうふうに肯定的にとらえると、俺は特別なミッションを背負ったんかなって。人は見かけによらん。前川彰司はその一歩をもう踏み出しているという風に思ってほしい気もします」
奪われた“人を信じる気持ち”
事件から39年、“奪われたもの”は何だったのか。
取材を続けてきた私たちは、改めて前川さんに聞きました。
前川さんはうつむきながら「それは言わんときますわ」と一言。
そして、十数秒の沈黙の後、こう続けました。
「もう人間、信じられないな。人間を信じることはもうできねえ。『人を信じられんもんが、人様から信じてもらえんぞ』って言われたが、ああそのとおりだなって。それほど自分の心は空っていうか、孤独な寂しい部分があります」
誰かを信じ、誰かに信じてもらう。
人としての根っこのようなものが、奪われてしまった。
えん罪は「過去」の時間だけではなく、疑いが晴れた後の「未来」をも奪ってしまうことに気付かされました。
ひとりの尊い人生が奪われたことを私たちはどう受け止めればよいのか。
日本弁護士連合会が支援し、2010年以降、再審で無罪が確定した事件は7件相次いでいます。
「社会の思いをえん罪事件にも向けてほしい」
前川さんの願いです。
誰が読むんじゃ!
僕は読んだよ
あんたも無駄なレスする暇があるなら読めよ
読むのが何より無駄だろ
あんたもいつ誤審を受けるか分からんよ
日本人全体の問題やで
読まずに無駄と判断した理由は?
フィクションでもドキュメンタリーでも個人のただの不幸話は何の得るべき情報も面白味もない
スレタイい悲しくなるからとあるが別に俺は悲しい気分になんてなりたくない
参政党とか支持してそう
ごみbe
袴田事件といいジャップ警察の取り調べはとっとと可視化されるべき
とか考えたら発狂するだろ
あくまで昔の話だから、不安になる必要ない、安心しろ
その答えありきで間の筋書き構成してくからな
この当時はそういう時代だった
今もホシって決めつけたら警官の行動は変わらないよ。
そして何をしたらダメなのか何をしたらよいのかの判断もできない。
カナダとかだと警官個人を倫理委員会にかけて糾弾できるけど日本は出来ない、その差が如実に出ている。
昔ドラマ相棒で見たけど結構安くて衝撃だったが
そして裁判を戦ってくれてありがとう
で、事件は未解決で殺人罪には時効は無くなった
ありうる
それにしても警察適当に仕事しすぎだろ犯人電話帳で適当に選んでんじゃねえの?
😡
そのトップ全員に同じだけの刑を与えて逸失利益分も徴収する制度にしろよ
今もその事件の裁判中だけど検察の主張は警察協力者の陰部モロ出しは公然わいせつを誘導するものでは無かったという無茶苦茶な理論で警察の不手際を全く認めていない。
今も日本の司法は終わったままなんだよ。
警察のお気持ち一つで言いがかりで逮捕するのがジャップランド
知人もジャッポリに相当追い込まれてた可能性を否定できない
自白強要、冤罪は日常でゴーンも当然逃げるし山上はいまだ裁判も始まらず安倍晋三は逃げ切るわね
嘘つくな売国ハゲまで読んだ
日本の警察が優秀って嘘だろ
脅しまくって自白させればいいってコト?
畝本検察は自民党の悪事を総スルー
舐めてる
政権交代したらせめて警察官倫理委員会を作って市民があまりにも酷い警官を倫理委員会の場に呼び出せる欧米のようなシステムは欲しい。





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