技能実習生の中国人女性、実習先から逃げ出す 「月給18万って聞いてたのに朝4時半から夕方まで働いて6万」

劣悪な実習先から逃げた末、特殊詐欺に利用され　中国人女性それでも「日本好き」　
毎日新聞2020年6月6日 18時00分
https://mainichi.jp/articles/20200606/k00/00m/040/085000c?inb=ra

「家族に仕送りをしたかった。被害者に心から謝りたい」――。高齢者からキャッシュカードをだまし取ったとして、
大阪府警に詐欺容疑で逮捕された元技能実習生の中国人女性（23）が毎日新聞の取材に応じた。
体が弱い母親を支えようと、故郷から1000キロ離れた九州の弁当工場で働いていた女性。
手にした給料は、事前に聞いた額のわずか3分の1だった。実習先を逃げ出して各地を転々とした末、
特殊詐欺グループに「受け子」として利用された一部始終を、涙ながらに語った。

　大阪府北部の山あいにある豊能町。2019年10月、町内の高齢者宅に「全国銀行協会」などと名乗る男らから電話があった。
「キャッシュカードが不正利用されているので回収する」。女性は協会職員になりすまして住宅を訪ね、カードや通帳を
だまし取った。詐欺罪などで起訴された女性は20年4月、大阪地裁で懲役3年・執行猶予5年の有罪判決を受けた。

「仕送りしたい」渡航を決意
　女性は中国東部の江蘇省出身。家族6人で暮らしは貧しく、体が弱い母親に苦労はかけられない。
専門学校を卒業後、人材派遣会社に勤める親族から、日本での技能実習を紹介された。きれいな寮の写真を見せられ、
月給は18万円と聞かされた。「仕送りして母親の幸せな笑顔が見たい」。渡航を決意した。

　17年11月に来日し、佐賀県内の弁当工場へ。他の中国人らと住み込みで働き、午前4時半に起きて夕方まで弁当におかずを詰めた。

　しかし、月給は6万円程度で休日は週1日だけ。2段ベッドを詰め込んだ8畳ほどの部屋に、5人で生活させられた。
日本語は来日前に1カ月ほど学んだだけで、日本人の上司とは会話もままならず、相談しても待遇は改善されなかった。

　食材の里芋を切っていた際に刃が滑り、手をけがした。何針も縫ったが、誰にも心配されず、掃除ばかりさせられる
ようになった。「だまされた」。次第に不信感が募り始めた。約1年後、同僚と一緒に荷物をまとめ、寮から逃げた。

「客の代わりにお金を下ろすだけ」
　広島や大阪を転々とし、マッサージ店などで働きながら食いつないだ。ある日、この同僚から仕事を紹介された。
「お客さんの代わりにお金を下ろすだけ。報酬は10％」。それが特殊詐欺グループの仕事だった。

　名前も知らない指示役からスマートフォンで行き先や金の引き出し方を聞いた。「白いシャツにスーツ用のズボンを
着るように」。服装を指定され、偽の身分証も送られてきた。

　女性は指示通りに高齢者からカードを受け取り、現金自動受払機（ATM）で約110万円を引き出した。
その直後、付近を警戒していた捜査員に見つかり、逮捕された。

　20年1月に始まった公判。女性は「違法ではないと言われ、信じてしまった」と釈明し、被害者に謝罪した。
大阪拘置所では中国語と片言の日本語で取材に応じ、「仕事がつらかった」と涙をぬぐった。
目は真っ赤で、伸びた金髪の根元は黒くなっていた。

元技能実習生の女性から記者に届いた手紙。イラストとともに、「今も日本が大好きです」と
中国語で書かれている＝大阪市内で2020年6月5日午後6時36分、藤井達也撮影
　
国選弁護人を務めた下枝歩美弁護士は「彼女は精神的に幼く、お金を稼ぎたいという安易な気持ちだった。
実習先から逃げたら、まともな所では働けないので、詐欺グループに利用されたのだろう」と話す。

　判決が確定し、中国に強制送還される前の5月上旬、女性から記者に手紙が届いた。「ドラえもん」など、
女性が大好きなアニメのイラストとともに、工場でのつらい思い出や将来への決意が、6枚の便箋いっぱいに
中国語でつづられていた。「今も日本が大好きです。必ず初めからやり直して、いつかまた日本へ来たいと思います」

これ親族が騙して抜いてるだけじゃね？

月給が６万円なら食費とか住居費とかどうすんのよ