霞が関官僚 コロナと閣僚の尻拭いで働きすぎだと話題に

　政権の不祥事とそれに伴う与野党対立の激化が、労働環境の悪化に拍車をかけている面もある。森友学園・加計学園の問題は前政権から引きずり続ける。「桜を見る会」前日の夕食会の費用負担をめぐっては、当時の安倍晋三首相の国会答弁の誤りが明らかになった。官僚たちは野党の合同ヒアリングに呼ばれ、政治家たちの代わりに追及を受ける。女性は「閣僚など政務三役が直接、野党と納得できる議論ができないから、官僚にしわ寄せがいく。官僚が尻ぬぐいしている」と語る。

　長時間労働を美徳とするような空気に疑問を抱き、民間企業で働き方改革を進める仕事に移った別の省の官僚もいる。この女性も「若い世代は『世の中に貢献したい』と思っても、別に官僚になることにこだわっていない」と話す。

　■２０代、自己都合退職４倍に　「公務員離れ」顕著、働き方改革は途上

　「公務員離れ」はデータで明らかだが、働き方改革は緒についたばかりだ。

　内閣人事局などによると、２０１９年度の２０代の中央省庁の総合職の自己都合退職者は８７人。１３年度の２１人から４倍になった。国家公務員の働き方に関するアンケートでは３０歳未満の官僚で男性は１４・７％、女性でも９・７％が数年以内に辞職する意向を示していた。定年より前の辞職の理由を複数回答で尋ねると、「長時間労働」は女性の約５割、「収入の少なさ」は、男性の約４割を占めた。

　今年度の国家公務員採用試験で総合職の申込者数は４年連続で減少。いまの試験が導入された１２年度以降で最も少ない１万６７３０人にとどまった。

　河野太郎・国家公務員制度担当相はまず、働き方の実態調査に着手。質問通告の待ち時間など、正規の勤務とみなされていない「在庁時間」を全省庁で調べた。１０～１１月に一般的な超過勤務で「過労死ライン」とされる月８０時間を超えた人の割合は、全職員で１割だったのに対し、総合職の２０代では３割。若手が長時間、職場に拘束されている現状の一端が分かった。

　ただ、テレワークの推進など、方策を模索している段階にとどまる。来年度の国家公務員の定員は４２年ぶりに増え、３９９人増の３０万２４４９人になると決まったが、これはコロナ対応への緊急避難的な措置が主眼だ。（楢崎貴司、坂本純也）

　元厚生労働官僚で、霞が関の官僚の働き方を描いた「ブラック霞が関」の著者・千正（せんしょう）康裕さん（４５）の話

　小泉政権以降に「官邸主導」が強まり、支持率を意識してスピード感をもって政策を動かす傾向は強まった。そのこと自体は評価するが、適正な人員体制を考えずに進めてきたのが問題だ。そもそも、公務員の減少や高齢化で、適正な人事配置が出来ない状況になりつつある。霞が関では２４時間土日も対応できることが前提となっているが、夜中も働ける人が少なくなるなか、家庭の事情などのない若手・中堅にしわ寄せが行き、体を壊したり、家庭と両立できず離職が増えたりという悪循環が続く。若手が離職する状況を放置すると、組織が崩壊し、国民に迷惑をかけることになってしまう。