押井守「細田守はまだ若いから、テーマが何もない。良い映画を作るには人生の年輪が必要なんだよ」

押井　いえ、一旦終わることです。

── ということは、一旦、その状況を離れ、客観性を手に入れるということですか？

押井　そうです。挫折するという言い方でも構わない。自分が渦中にいると、それはできない。
平たく言ってしまえば、人生の年輪が必要なんです。
自分の人生を通じて映画のモチーフを獲得することは、例外なしに年を取らないと無理。

── じゃあ、若いうちはどうすればいいんですか？

押井　映画はどうであっても完成するから。
その映画の中身のことを問えば、人生の年輪が必要になると言っているの。
そうじゃないと成熟した表現には至らない。
だから、細田くんは演出の才能はある。でも、まだ若書き。エチュードです。

押井　そりゃあ若い人たちが観てるからですよ。彼らは共感できるんじゃないの？　
私のようなおっさんが細田くんの映画を観るときっと、若さしか感じないと思うよ。

『時をかける少女』にもやたら元気な少女が出ていたけど、その元気が彼女の本質的なものとは、私は思えなかった。
つまり、本質的な人間の自己肯定感は伝わってこなかったんです。

私のようなおじさんはピクリともしません。
おそらく『竜とそばかすの姫』にもピクリともしないだろうね。

実写パトなんてすべてパト2の自己模倣でしかない
それは成熟とは言わない

あと、ただ老いて枯れただけの人間を成熟とは言わない

ただ画を優先しすぎてシナリオが支離滅裂だから
まずテーマを設定してシナリオに背骨を通せって
押井のアドバイス自体は価値はあると思うよ