人生相談「東大生で官僚志望の娘が「私は下々の人とは違う」と発言。大学での慢心が心配」＿回答者「それお前の家庭教育のせいじゃね」

人生相談
東大生の娘が慢心＝回答者・ヤマザキマリ

　東大生の娘は上野千鶴子さんの入学祝辞に感動したはずなのに、「私は下々の人とは違う」と言い放ちました。
慢心させるために東大に行かせたわけではありません。将来は官僚希望で、大学院進学が決まっています。
このような心根が強まるのではと懸念しています。いっそ必要な仕送りを止めようかと思いますが、乱暴な方法でしょうか。（74歳・男性）

　「恵まれた環境と恵まれた能力で、そうではない人々を助ける」という祝辞に感動したはずの
娘さんにあるまじき発言だとあなたは言いますが、そうでしょうか。
私は、この祝辞によって自分たちを“市井の人々とは一線を画す、社会における選ばれし特別な存在”であると自覚し、
上から目線力を極めた学生は大勢いたのではないかと思います。

　もしあなたにとって娘さんが東大生であることが誇りなら、その誇り自体がすでに“上から目線”的意識を示すものであり、
娘さんが“下々”という言葉を使う可能性は、家庭の中で既に育まれていた、ということです。

　優れた人間性というのは、勉強の量と質だけで育まれるものではありません。
家族や社会で経験する理不尽さや不条理、自己への内省、そういった学術とは関係のない修練を経なければ、
あなたが娘さんに求めているような謙虚な利他性は育まれないでしょう。

　そもそも人間の社会における幸福や恩恵の価値観は多様です。
東大に入らなくても、東大に入った人の力を借りなくても、恵まれた人生を送る人がたくさんいることを、まず忘れてはなりません。
仕送りを止めることで娘さんがあなたの理想とする人格になるかどうかはわかりません。
ただ、お互いにとって家族というものを見つめ直す人生経験の一つにはなると思います。（漫画家）

https://mainichi.jp/articles/20230218/ddm/013/070/009000c